解体工事がつなぐ、木材と営み [東京哀愁編]

2018年7月23日解体工事面白コンテンツ, 解体業者向けコンテンツ東京 解体工事, 解体工事, 東京

解体工事で感じる事

 

 

少し前まで、日本は働けば働くほどお金が手に入り、より幸せになれると信じられていました。そのため生活はどんどんと加速の一途をたどり、人々は日々を忙しく、でも充実して送っていました。

しかし近年では、そういった生活に対して疑問を抱く人々が増えてきました。どんどん忙しくなって、お金を手にして、私たちは幸せになったのか? 幸せになれるのか? そこに対して行き詰まりを感じた人たちを中心として、よりゆったりとした余裕のある人生が注目を集めています。いわゆる、スローライフと呼ばれているものです。

その一環として、最近では急激に、古民家に対する人気が上昇しています。古民家はまさにスローライフの象徴ともいえる存在となっていて、古民家カフェや古民家アトリエ、古民家旅館などが人気を博しています。「まだ手に入れていない、どこかにあるはずの幸せ」を追い求める人生から、「ここにある、手の届く幸せ」を大切にする人生へと転換してきているように感じます。古民家は、そういった流れの中でぬくもりをもって大切にされているのです。

しかし古民家ならなんでも良いのか、購入すればそのまま住めるのかというと、そう物事はスムーズにいきません。古民家は文字通り古い物件ですから、リノベーション、あるいは東京都内では解体工事が必要になってくることが多いのです。

ここで解体工事と聞くと、何もかもが跡形もなくなってしまうような様子をイメージされる方がいらっしゃるかもしれません。確かにヨーロッパのほうでは、クレーンに設置した鉄球を振り子のように動かして、建物を破壊するという解体が実施されることも多いようです。最近ではテレビ番組も解体工事に注目していますから、どこかでそういった映像を見かけられたことがあるかもしれません。

しかし、日本の古民家に対して行われる解体工事というのは、必ずしもそういった「破壊」というイメージが浮かぶようなものではありません。日本の古民家は非常に貴重な木材を利用して建てられていますから、これを丁寧に取り外すことで、次のリノベーションなどの際に再利用するのです。

日本の古民家に使用されている木材は本当に素晴らしく、「古いからもう脆くなっているのではないだろうか」なんて心配する必要はありません。もちろん、ケアやメンテナンスは必要になってきますが。

例えばケヤキなら、その木材としての強度が落ちるまでは約800年、ヒノキなら1200年と言われています。これは現在主に使われている一般的な家屋と比べても、はるかに強い強度を誇っています。

そして何より注目していただきたいのは、長い年月を経て人々をその内に抱き続けた木材だけが持っている、なんともいえないあたたかな風合いです。その屋根の下で暮らしてきた人々のぬくもりがそのまま木目からしみ込んでいるかのような。木材が人々の営みを見守って、ほころんだ笑顔をたたえているような。どれだけ科学技術が発展した現代でも表現しきれないぬくもりが、古民家の木材には宿っているのです。

解体工事では、こういった貴重な木材を次世代にまでしっかりと生き永らえさせることができます。中には家屋としてではなく、テーブルや椅子などの家具、ランプや看板などのインテリアとして次の生を歩み始める木材もあるかもしれません。

しかしそこには、「解体」という言葉からまずイメージしがちな、「破壊」というような冷たさはありません。「解体工事」は、丁寧に命を受け止め、そして次に手渡しするような、そんなあたたかさをもった行為なのです。

古民家カフェや古民家旅館など、これから立ち寄る機会も多いことと思います。そんなときはぜひ、その空間を満喫するとともに、解体工事が行われるはるか前の、その木材が見守ってきた人々の営みというものに想いをはせてみていただきたいと思います。それまでよりもっと、古民家というものが好きになるかもしれません。