今更聞けない、アスベストの危険性とその対応策とは
アスベストは「石綿」とも呼ばれる天然の鉱石です。このアスベストは、その利便性の高さからかつては大々的に使用されており、住宅だけではなく学校や船舶、鉄道の車両など、人が多く集まる場所でも使用されていました。しかし、後に石綿が使用禁止にされ、2005年には「石綿障害予防規則」施工されました。さて、このアスベストとはそもそもどのような物質なのでしょうか。また、その危険性とそれに対する対応策について、予備知識の無い方にも理解できるよう、この記事で解説していきます。
そもそもアスベストとは?なぜここまで普及した?
アスベストは現在はカナダなどで産出している天然鉱物です。日本でも北海道をはじめ、静岡、九州などで豊富に産出していました。1969年頃までは各地で採掘されていたという歴史があります。アスベストが使われはじめた歴史は古く、古代エジプトや中国の周の時代にまで遡ることができることができます。古代ではランプの芯やミイラを包む布に使用されていたことがわかっています。アスベストが普及した理由は、非常に扱いやすく安価であったことが挙げられます。アスベストはもともと繊維状鉱物のことを指しており、この繊維は一本一本の直径が髪の毛の5,000分の1という細さながら、耐久性、耐熱性、電気絶縁性に優れているという特徴があります。これらの特徴に着目し、建設や建築の場面、電気製品、家庭用品などにも幅広く使用されてきました。建設・建築の場面ではほぼ必須といってもよい材料のひとつで、防火・防音・断熱用材として利用され、このような要素が必要となる学校や公共施設でも多く用いられてきました。また、屋根瓦、石膏版、天井用の化粧板にも使われています。またこのほか、アスファルトと混ぜて道路の舗装のひび割れを防ぐという目的で使用したり、モルタルに混ぜてより捏ねやすくしたりといった用途でも使われていました。このほか珍しい使用方法としては、旧ソビエト連邦の宇宙船にも使用された素材であることが知られています。アスベストは現在、新規に使用されることはほぼなく、政府としても使用を全廃していくという流れの中にあるため、基本的に新築の物件などであれば建築現場でもアスベストの被害にあう可能性は低いものと理解してよいでしょう。しかし一方で、すでに使われているアスベストに曝露される場合には危険が伴います。特に、地震・火災などで建物が倒壊する場合、大規模な施設では多くのアスベストが使われてきた経緯に注意を払う必要があります。また、住居などの解体工事などが行われる場合にも注意が必要ということになります。
アスベストの危険性とは?
アスベストは、このように非常に扱いやすい性質を持っており、これによって様々な場面で利用されてきました。それだけに、建築現場や建設現場ではアスベストの存在を見ないことのほうが稀であるほどよく知られた素材でありました。そんなアスベストが、危険性の指摘とともに「静かな時限爆弾」と呼ばれることとなったのです。アスベストの危険性は、その繊維質が空中に飛散することがまずその原因のひとつであるといえます。アスベストの危険性が初めて発見されたのは1900年台とされており、このころ、アスベストを採掘する石綿鉱山街において、短命や肺病を患う人が多かったことから研究が進められた結果でした。1924年に「石綿症」として診断基準が設けられたのはイギリスで、日本でも徐々にアスベストの危険性が判明しましたが、吹付けアスベストの使用が禁止されたのは1975年9月のことでした。アスベストに曝露されることによる危険性は、以下のものがあります。まず、アスベストは発がん性が指摘されています。このほか、肺線維症、肺がん、悪性中皮腫などが健康上のリスクとして指摘されています。アスベストが体内に入り込んだ際にどのような作用を示すかについては、現在仮設の段階ですが、人間が呼吸によって通常の異物、とくに生物由来のもの、たとえば綿や羊毛などの場合には、白血球の一種がこれを分解することで消化されます。しかしアスベスト繊維が体内に(とくに肺)入った場合、白血球がこれを分解することができません。分解ができないまま、アスベストの周囲は白血球に覆われると、今度はその白血球が死滅し、がん細胞となるという研究がなされています。細胞が、分解できない繊維を取り込むことによって炎症を起こし、その炎症を起こしている細胞から発せられた活性酸素によって、DNAが傷つけられることががん細胞化する原因とされています。このような被害をもたらす物質には大きさの基準があり、繊維の直径が0.25μmよりも細く、長さが8μmよりも長い物質が発がん性が強いとされているのが現在の研究です。アスベストによる健康被害を受けた労働者や、その家族などの被害者には、現在「石綿による健康被害の救済に関する法律」により、医療費や弔慰金が支給されることとなっています。アスベストは、建造物が解体、あるいは崩壊しないかぎり空気中に飛散せず、空気中に飛散しない限り人体には影響がないものとされています。なお、アスベストは水道管にも使用されていた経緯があり、私達が使用する水にもアスベストは含まれています。しかし、アスベストは空中に飛散したものを吸い込んで、肺から取り込む(肺に突き刺さる)ことで発がん性を発揮するものであり、水道水中に含まれているアスベストを仮に飲み込んだとしても、影響はないというのがWHO(世界保健機関)、厚生労働省の見解です。
自分の建物にアスベストが使われているか調べるためには?
さて、ここまでアスベストの危険性と、アスベストがどのように使われてきたのかについて解説をしてきました。しかしながら、建物のオーナーさんにとって知りたいことは、自分の所有している建物にアスベストが使われているのかどうかという点でしょう。自分が持っている建物にアスベストが使われているか調べる最も単純な方法は、調査分析会社に依頼をすることです。まず基本的に、アスベストを使用したかどうかについては、建物を施工した際の施工業者、工務店などに問い合わせ、設計図書の原材料等で確認をするということができます。これは国土交通省がアナウンスしている内容です。しかし、国土交通省は同時に、アスベストの使用が記載されていない場合や、改修工事・補修工事などでアスベストが使用された可能性もあるため、現地調査と合わせて調べる必要があるということも述べています。アスベストが使用されているかの調査に関しては、「建築物アスベスト含有建材調査者」という公的資格があります。これは「建築物石綿含有建材調査者講習登録規程」という国土交通省の告示に基づいた公的資格で、この資格を保有する専門の調査者を活用することによって、アスベストの使用についての調査を行うことが推奨されています。
アスベストへの対策は?
まず、アスベストへの「防護」という観点では、アスベストを扱う現場において「防じんマスク」「保護衣類」「エアフィルター」などの設備を設けるよう定められています。防じんマスクは一般的な市販品のマスクとは異なり、微粒子の除去率が高い高性能なものが採用されます。とくに、建物の不適切・突発的な事象による解体が起こった場合(たとえば災害や事故など)には、倒壊した建物や瓦礫などからアスベストが飛散するおそれがあるため、アスベストが発生した場所で作業を行う作業員のほか、周辺に住んでいる住民にもこれらの防じんマスクの着用が推奨される場合もあります。一方、自治体によっては、アスベストの被害にあった可能性がある、その心配がある人に対して、レントゲン写真を無料で撮影する検診サービスを実施するなどの施策が行われています。レントゲン検査で肺に影が映るというのは、アスベスト以外にも起こりうることですが、レントゲンにおいては少なくとも肺の不調に関して検査をすることができるため、不安のある方はこうした検診を活用することもよい選択であるといえます。
まとめ
話題を集めた「アスベスト」ですが、実は非常に扱いやすい素材として、過去には積極的に使用されてきた建材です。正しい知識をもって接することで、アスベストの危険性は排除することができますし、現在では新しく使用される状況も限られています。もちろん、解体工事の際などには、アスベストについての適切な処分を検討する必要はあるということは、オーナーさん自身が知っておくべきことでしょう。