環境にやさしいだけじゃない、古民家廃材活用の価値とは
古くなった家を解体する際、解体によって大量に発生する廃材は、一般的にゴミとして扱われます。しかし、良質な廃材は再利用することができたり、高価格で買い取ってもらうこともでき、その需要は古民家ブームと共に年々増大しています。古材の再利用は、環境に優しいだけではなく、実は他にも様々なメリットがあります。今回の記事では、その廃材の再利用にはどのようなメリットがあるのかをご紹介します。
環境面でのメリット
日本の木材のほとんどが、海外からの輸入に頼っていることはご存知でしょうか。そして、その木材の中には、環境問題の悪化に繋がる形で伐採されているケースも少なくありません。環境問題に対する意識が国内外問わず高まっているのに伴い、3Rの原則である「リユース・リデュース・リサイクル」の見直しに注目が集まっています。古材の活用も例外ではなく、使える廃材を再利用することで、環境問題に対する取り組みに貢献することができます。古材を活用することは、環境問題解決のひとつの糸口になっているといえます。
金銭面でのメリット
上記のように、リフォームやリノベーションで古材を再利用すれば、もちろん材料費の節約に繋がります。しかしそれだけではなく、品質の良い古材は買いとってくれる業者もあり、金銭面でもメリットがあるのです。
使わないなら「売る」という選択肢を
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多くの古民家には、貴重な建材が使われています。現在、古材の需要が高まっているため、状態の良いものであれば買い取りをしてくれる業者がいます。したがって、その古材は「資産」になり得ます。
強度面でのメリット
古い木材はもろくて弱いイメージがありますが、古民家で使われている古材は、そのほとんどが木の特性を活かしながら強度を高めたものと言われています。古民家で使われている古材の強度は、年数を経れば経るほど強度が増していくのです。木材の強度が増すのは、温度や湿度によって収縮する調湿機能によるもので、その強度は新しい木材にも引けを取りません。なんと、樹齢100年のヒノキの場合、伐採されてから100年後が最も強度が増しているという研究結果もあるそうです。
お寺でも取り入れられている古材の活用事例
このようなことから、古材への信頼は、一般家庭の家建築のみならず、お寺の建設にも利用されています。世界最古の木造建築と言われている法隆寺の築年数は1300年で、使われている古材は檜です。このことからも、鉄筋コンクリートに比べ、いかに古材が長期的に優れているかが見て取れます。
古材の活用と日本の文化
日本は昔から、モノを大切にする・ごみを出さずに再利用するなどという考え方があり、それは生き方にも反映されていました。家を建て直したり、新築住宅を建てる際はまさに古材などを活用し、無駄のない、再利用の循環が成り立っていたのです。戦後は高度経済成長期などを経て、木材の輸入も拡大し、再利用を重視するかつての日本の考え方は損なわれつつありますが、環境負担が国際的な問題に発展している今日では、再び古材の再利用を推進していた日本の考え方に注目が集まっています。
先人たちが残した知恵
先人たちが残した知恵は、古民家に見ることができます。先人たちの知恵は日本の歴史や文化と密接に関係しており、私たちはその知恵を後世に伝え、文化を残していく責任があると言えます。
古材の活用は、日本の職人を守る?
本来の家の建築は、木の良さや特性を知ることから始まります。木の種類や育った場所、環境などによって、木材一本一本に個性が生じると言われています。さらに同じ一本の木でも、部分によっては性質が異なるため、これらを熟知し、適した場所に適した木材を使うことが基本となるのです。日本の伝統的な技術を大切にしている大工は、これを1400年も前から熟知しています。一方で、現在の建築方式では、家の寿命が平均37年と言われているほか、大工は「木」について知らなくても、設計図通りに組み立てれば問題がないように書面化されています。古材を扱う日本が誇る伝統的な職人は、木を正しく使うことに長けています。したがって、私たちが古材を活用し、何百年も生き続ける住まいをつくることは、日本の文化や伝統を守ることにも、また伝統を大切にしている職人を守ることにも繋がるのです。
今こそ問われる、古材活用の価値とは
現在では、様々な飲食店やカフェ、一般家庭にも古材の良さやその機能が認められ、その需要は右肩上がりです。古材には優秀な機能があるほか、デザイン性にも優れているため、内装全体を一新するために味をだすことに使われたり、古材の深みを利用して温もりを演出したり、アクセントなどにも活用されていたりと、その人気ぶりは止みません。上記に挙げた、環境面・金銭面・強
度面のメリットに加え、古材を活用することで先人たちと繋がることができるのです。古くから日本に伝わる、伝統的な文化や歴史、先人たちが残した知恵の価値を認識し守り続けていくことは、私たち日本人が自分たちのアイデンティティを守ることに繋がるのではないでしょうか。