解体工事の工法、昔と今
解体工事の工法、昔と今
2020年東京オリンピックに向けての準備、空き家問題などで、「解体工事」という言葉を以前よりもよく耳にするようになったのではないかと思います。
ところで、解体工事と聞いて、どんな場面を想像するでしょうか。
おそらくなのですが、多くの方がテレビで見かけるような、「鉄球やハサミのついたクレーン車で、一気に破壊する」というものが思い浮かぶのではないでしょうか。
たしかになかなかの迫力映像なので、一度テレビで見かけたことのある方は、印象に強く残っているのかもしれません。
しかし現在の日本では、実は「鉄球で一思いに破壊する」「重機でバリバリと解体する」というような解体工事は、基本的に実施されていません。
そのような解体工事は「ミンチ解体」と呼ばれているのですが、平成14年に「建築リサイクル法」というものが施工されたことによって、このダイナミックな解体工事は原則として禁止されたのです。
ミンチ解体は建築リサイクル法が施工されるまでは、解体業界において主流の解体方法でした。どのような工事だったかというと、重機によって建築物を一気に取り壊していく工法です。
多くの方が思い浮かべる、「一思いに破壊する」というような、あのイメージに近いかもしれません。
まさに一気に解体していくため、工期が非常に短いというメリットがありました。
さらに、工期が短く手間もかからないため、工事費が安くなります。
重機で破壊したあとの廃棄物もそのままひとまとめにして埋め立てなどをしておしまいという流れだったので人でも少なく済み、人件費の面でも安く抑えることができていました。
このように紹介すると良いことずくめのような気がしなくもないですが、いったいどうしてミンチ解体は禁止されたのでしょうか。
ミンチ解体の問題点としては、やはりその名前の通り、建築物を解体したあとの、ミンチのようになった廃棄物の処理に関してでした。
ご存知の通り、建築物というものは様々な材料が使われています。コンクリートにガラス、金属に木材など、それはもう様々な材料が集まって作られているものです。
それを一思いにバリバリと破壊するミンチ解体だと、当然ながら廃材も混ざり合ってしまって、分別などまず不可能です。
そのまま埋め立て処分ということになります。しかし、次第に埋め立てる場所に困ってきたこと。
またアスベストなどが廃棄物に混ざったまま処分されてしまうなど、危険な問題点もあったのです。
そこで、平成14年に施工されたのが建築リサイクル法です。
これによって、ミンチ解体は原則禁止とされ、新たに分別解体という工法が主流となって現在にいたっています。
さらに契約関係や届出、解体工事業者の登録制度なども規定され、よりきちんと管理された中での解体工事が行われるようになりました。
この分別解体という工法は、名前の通り、建築物の解体後、材料ごとに廃棄物を分別するというものです。
そのため以前のように一気に破壊するミンチ解体は行えなくなり、足場を組んで丁寧に解体していくという工事に変化したのです。
これによって工期は長くなり、人手と手間もかかるため工事費もかさむようになりました。
と、このように書くと「環境には優しいかもしれないけど、やはり財布には優しくないのではないか」と思われるかもしれません。
しかし実は、最終的にはミンチ解体よりも分別解体のほうが安く済むのです。その差は、産廃廃棄物の処理費用にあります。
ミンチ解体だと、すべての廃棄物が混ざった状態であるため、「混合廃棄物」という扱いになります。
しかしきちんと分別解体されていると、材料ごとに処理されるため結果的にすべて混合廃棄物となるミンチ解体よりも、分別解体のほうが安く処理できるというわけなのです。
さて、解体工事の工法について、昔と現在のものをご紹介しました。
この上で知っておいていただきたいことが、もしもあまりにも安い見積書を提示されたときは、ミンチ解体をして廃棄物を不法投棄する業者かもしれない、ということです。
解体工事の依頼をするときは、しっかりと内容を確認してみてください。